柔道整復師・鍼灸師として大阪で経験を積んだ後、2003年に地元・姫路で「きたなか整骨院」を開院。矯正・鍼灸・整体を組み合わせた複合療法を行う。整形外科や歯科など医療機関との連携も行うなど、総合的なアプローチから地域の健康を支えている。2012年には神崎郡福崎町に「もちの木整骨院」を開院。2014年には姫路市で2院目となる「しぃーさん整骨院」と共に、新規事業であるリラクゼーションサロン「SORAE」をオープンする。
―――きたなかグループでは、さまざまな試みで健康になるためのサポートをされていますが、先生自身が、柔道整復師や鍼灸師を目指された理由は何だったんですか?
僕は、皮革会社を経営する両親のもとで、2人の兄と育ちました。長兄は歯科医、次兄は家業を継いでいます。2人とも中学生の頃から目標を持って、そこを目指して行動していました。
僕が、母と進路の話をしたのは、高校2年生の時。漠然とした気持ちで「学校の先生にでもなりたいな」と話していた三男の姿に、母は危機感を持ったんでしょう。仕事の大変さなどを教えてくれた上で、「こんな職業もあるんだ」と教える為に、自分の通っていた整骨院に連れて行ってくれたんです。
初めて見学する整骨院の光景に、僕はただ驚かされたことを覚えています。先生の施術によって、患者さんが身体の不調や痛みを解消されている様子や、施術後の先生に向けられる笑顔と感謝の言葉がとても新鮮で印象的でした。そして、自然に整骨院の仕事に興味を覚えていったんです。
しかし、高校で進路相談をしても、先生方の誰もがどうやって資格を取るのか、何をすればいいのかがわからない状態でした。
それもそのはずで、当時、柔道整復師の養成校は、全国でも13校のみ。入学にも、整骨院等を開院されている方の推薦状が必要な時代でした。
そこでも頑張ってくれたのが母でした。「息子の為に推薦状を書いてくれないか?」と、整骨院に片っ端から電話をかけてくれたんです。そのおかげで、ある整骨院から推薦状をいただくことができ、仙台市にある学校の1枠を手にすることができました。
―――関西だけでも多数の養成校がある現在では想像もつきませんが、資格取得だけでも大変だったんですね。独立することはいつ頃から考えておられましたか?
この世界を目指し始めた頃から、「27歳で独立する」と宣言していたんです。
仙台の学校を卒業後、柔道整復師として働きながら、大阪の学校に通い、鍼灸師の資格を取得しました。
そして27歳の時、地元・姫路に戻り開院したのが、「きたなか整骨院」です。
それから約11年。今年は、3院目となる「しぃーさん整骨院」と共に「SORAE」という新規事業を始めたのですが、土地勘のある地元であるからこそ試せたことかもしれません。R312線沿いの立地条件のよい場所に開院することができましたが、元々は父の所有していた土地でした。新たなことを始めるにはぴったりな場所だと考え、購入することにしたんです。
実は、整骨院に名付けた「しぃーさん」というのは、父の愛称なんです。僕だけでなく兄たちの事業でも、父の築いた基盤は何らかの形で助けになってくれていると感じています。「父のおかげで今がある」という思いから、敬意をはらって父の愛称を付けさせてもらいました。
―――2014年は、リラクゼーションサロンに参入されましたが、今後きたなかグループが目指していることはなんでしょうか?
やりたいことはいくつかあります。その1つは、海外で開院すること。
若い頃から「我々は技術職だ。世界のどこへ行っても仕事はある」思っていました。そこで、昨年、ジャカルタに行き、現地に住む日本人たちに向けて、施術をする機会を作りました。
ジャカルタにも、リラクゼーションサロンはあります。しかし、痛みや身体の不調に対する改善を目的として行われているものはありません。現地在住の困っている方を助けたいという思いから実験的に行いましたが、予想以上にたくさんの人に集まってもらえました。
そこで今、「2019年グローバル化!」と社内で宣言し、海外進出を目指しています。
「SORAE」は、もみほぐしや、美容に特化したニーズに応えるべくオープンしたのですが、海外でチャレンジするための、一つの実験的な要素も持っています。日本では怪我の治療は保険適用されますが、海外ではそれもありません。整骨院という枠を払って、求められていること。そして、我々に何ができるかを考える場所でもあるのです。
また、介護業界にも興味を持っています。整骨院には、要介護者のご家族が、空いた少しの時間を利用して介護で痛む身体をケアする為に来院されることが多いです。さらに、父が晩年、介護を必要としたこともあり、介護を受ける側、する側のどちらの気持ちも理解できるようになりました。
要介護者の医療・介護・リハビリを連携してサポートでき、さらにはそのご家族の心身もケアしていく。そんな総合的なケアのできる環境作りもやっていきたいと思っています。